Oh!MZ 1985年10月号
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[7]. Oh!MZ 1985年10月号より特集「日本語ワードプロセッサ」

今回取り上げるのは、ソフトバンクのシャープ系パソコンを対象としたパソコン誌、Oh!MZ 1985年10月号より特集日本語ワードプロセッサ

8ビットパソコンの時代から16ビットパソコンの黎明期にかけての日本語ワープロ事情をチェックすべく、読んでみました。

キー入力

変換キー

X1F

8ビットパソコンの写真を見ると、だいたいスペースキーがやたらと長いです。

これは、変換キーの類が用意されていなかったためです。

今の視点なら「スペースキーで変換」の一択なのですが、記事中にもX1や1500でワープロソフトを作るならスペースキーかリターンキーを変換キーに使ってほしいとあるぐらいで、まだまだスタイルが定まっておらず、明らかに作業効率の悪い「ファンクションキーで変換」というものも少なくなかったようです。

キー操作回数

キー操作

上の画像では、変換キーを▲、無変換キーを●として、各ソフト毎のキー操作の回数を数えています。

随分細かいことをしているように見えますが、技術とは、試行錯誤の後に確立してゆくものです。今となっては当たり前のスタイルも、挑戦と失敗の上に成り立ちます。

ワープロ仕事

コラム

オフィス・ワープロ私情というコラムに私の会社では,“ワープロ”=“女子社員の仕事”ということになってしまっています。とあります。

また、なぜWordStarなのかという記事の方でも、しかし、上司が手書きした書類を専念のワープロオペレータが打ち直していたのでは明らかに非能率的です。(中略)“ワープロなど女の仕事だ”という,きわめて前時代的かつ下劣な考えがオフィスにはびこっていることも“最初からワープロで入力する”思想を妨げる一原因とあります。

いやぁ、30年前とはいえ、そんな思想がはびこっていたと聞くと、何か腹が立ちますね。

かな漢字変換

かな漢字変換、今なら、システムにインストールされたかな漢字変換ソフト(MS-IMEとか)が、どのアプリケーションソフトで作業する時でも同じように使われます。これは、MS-DOS等の16ビットシステムにおいては、同様でした。

しかし、メモリ空間の限られる8ビットパソコンでは、そこまでOSが発達していなかったので、かな漢字変換はワープロソフトと一体であったようです。

この特集でも、ワープロソフトの評価記事の中に、「かな漢字変換」という項目が設けられ、各ソフト毎にあれこれ論じられています。

また、機種によっては(MZ-1500だけ?)、オプションで辞書ROMというものを付けることができたようです。

処理速度の遅い8ビットマシンでは、フロッピーディスクに辞書を置くよりROMに辞書を持っておいた方が、ずっと高速に変換できたであろうと想像がつきます。

WordStar

WordStarというのは、広く使われた英文ワープロソフトだそうです。元がテキストエディタであったので、テキストエディタとしても使われたようです。

記事中では、WordStarの機能を絶賛する一方、日本製のワープロソフトはWordStarの機能の“上っ面”だけをなめているように映りますと書いています。

まあ、この辺は、欧米と違ってタイプライターという文化的背景を持たずワープロ文化が洗練されていなかったり、8ビットパソコンには日本語処理が結構負担になる点がハンデになったり、ということがあるのかな、と思います。

ところで、WordStarの機種毎の違いについて、PC-98シリーズ専用のWordStar(Ver3.3)などは(中略)特に画面スクロールは瞬時に行われます。(中略)同じバージョン3.3でもMZ-5500/6500で使えるWordStarは、これまた驚くほど遅いのでがっかりしてしまいます。やはりビットマップディスプレイは8086CPUにとって荷が重すぎたのでしょうかとあります。

ビットマップディスプレイというのは、画面の1ドット1ビットに対応するようなハードウェアを指します。

例えば16ドット×16ドットの文字を表示する場合、1ドットが1ビットなら16ドットは16ビット、つまり2バイトになるので、2バイト×16ドット=32バイト書き込む必要があります(色とか細かいことはとりあえず置いておきます)。

一方のPC-9801は、漢字を表示できるキャラクタVRAMを搭載しています。キャラクタVRAMというのは、文字コードを書き込むだけで文字を表示できるハードウェアです。漢字であれば2バイト書き込むだけで表示できます。

32バイトと2バイト、1文字書き込むだけならどうということはないのですが、画面全体を書き換えるとかなってくると、昔のまだ性能の低いパソコンでは、無視できない差が出てきます。

このあたりの差が、日本語の処理速度においてPC-9801に大きなアドバンテージをもたらし、日本のビジネスの現場で圧倒的なシェアを獲得するにいたりました。

このPC-9801のアドバンテージは、コンピュータの性能が十分に向上し、日本語の表示に専用のハードウェアを必要としなくなるまで続きました。

ワープロソフト

倍角

この特集では、ワープロソフトがいろいろと紹介されています。

その中で、次の画像は、ユーカラというソフトの印字例です。

倍角の例

この中で、タイトルの文字は横幅が2倍になっています。こういう横が2倍の文字は倍角と呼ばれ、よく使われていました。今となっては死語ですね。

なぜ倍角文字が使われていたかといえば、実装が簡単だからです。

一般的なプリンタはラインプリンタといって、一行ずつ印刷していきます。なのでワープロソフトの側も、一行ずつデータを用意しては、プリンタに送ります。プリンタ自体に文字を倍角にするための機能が備わっていたので、プリンタに送るデータに「ここから倍角」という命令を入れるだけで、倍角の印刷が簡単にできます。

これがもし、縦横2倍の文字(4倍角と呼ばれていました)となってくると、途端に話がややこしくなります。

縦にも2倍になると言うことは、1つ前の行の段階で、上半分を印刷しておかないといけません。ということは、印刷するデータも、1行ずつではなく2行ずつ用意する必要があります。

また、普通は、行と行の間にはいくらか間隔を取って読みやすくします。ということは、4倍角を印刷しようとすれば、その行と行の間の部分にも印刷しなければならなくなるわけで…と、倍角に比べてずっと複雑な制御が必要になってきます。

結果、少ない処理で文字を大きくできるのが、倍角だったわけです。

縦書き

縦書きの倍角の例

ラインプリンタで縦書きの印刷をする場合は、文字を90度回転させて、やはり一行ずつ印刷していきます。なので、縦書きで倍角にすると、横ではなく縦に2倍になります。

DYNADESK

DYNADESK

16ビットパソコンであるMZ-6500用のワープロソフトとして、DYNADESKというソフトが紹介されています。

明るい色のせいか画面写真が見づらいですが、マルチウィンドウを使った近代的な画面になっていることが分かります。

OSが発達していないが故に独自にマルチウィンドウを使ったシステムを開発するしかなかった、というのが、時代だなぁ…と、つい思ってしまいます。

ワープロ専用機

この特集では、パソコン誌なので番外編的な位置付けて、ワープロ専用機についても取り上げられています。シャープ系のパソコンを扱う雑誌なので、取り上げられているワープロも、シャープの書院シリーズです。

ポータブルワープロ

WD-500

こういう画面に小さいワープロは、ポータブルワープロと呼ばれていたようです。

この小さい液晶画面、1行しか表示できません。よって、文書の一部しか見ることができず、全体像は見えません。

では、どうやってレイアウト作業をするのかと言えば…とりあえず一度印刷して、それを見ながら調整する、という感じになるようです。

位置付けとしては、タイプライターの延長として考えるといいのかな。

さすがに、これで小説とかの長文を書くのは大変そうですね。

一枚~数枚程度の簡単な印刷物ぐらいが、現実的な用途になってくるでしょうか。

書院のスペック表

大したことではないですが、今のプリンタだと、A4プリンタの上の機種はA3プリンタですが、かつてのプリンタでは、A4サイズの上はB4でした。

今はだいたいみんなA4で印刷しますが、一昔前までは、B5やB4がよく使われていました。なので、B4プリンタというものがあったわけです。

おわりに

やはり、低い解像度で単純なレイアウトでも割と簡単にカッコよく印刷できる英文と違い、日本語をきれいに見せるのは難しいな、と思います。

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